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ききにおけるりろんてきいしき

危機における理論的意識

三木 清

「改造」1929(昭和4)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,790 字 · 16 页

青空文庫

思想の危機とは、これを純粋に理論的に見るならば、一定の思想が自己の反対の思想へ転化してゆくことを意味する。この転化そのものはその思想にとって危機として現われる。思惟が一定の思想を真理としてそれに固執し、それを永久に自己同一的なものとしてどこまでも維持しようとするとき、この固執され、固定された自己同一性は、自己がまさに在るところのもの、すなわち一面性として、制限性としてみずからを現わすに到る。換言すれば、その思想は自己の偏見であることを顕わにするのである。しかるに一面性と制限性とは、あたかも一面性として、制限性として、虚偽である。かくて最初の真理は虚偽であることが分る。この自己批判によって一定の思想はその反対のものへ移ってゆく。この推移が思想の危機であり、したがって危機的とは批判的ということである。かくのごとき危機はまことに思想そのものにとって価値あるものでなければならぬ。なぜなら、それによって初めて思想は運動し、発展し得るからである。思想はその対立者によって否定されると同時に、このものの媒介によって自己の一面性と制限性とを脱して自己を止揚する。