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やくどしとエトセトラ

厄年と etc.

寺田 寅彦

「中央公論」1921(大正10)年4月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,428 字 · 19 页

青空文庫

この場合にはもはや偶然あるいは超自然的因果の境界から自然科学的の範囲に一歩を踏み込んでいるように思われて来る。

そういう方面から考えて行くと、同時代に生れて同様な趣味や目的をもって、同じ学校生活を果した後に、また同じような雰囲気の中に働いて来たものが多少生理的にも共通な点を具えていて、そしてある同じ時期に死病に襲われるという事は、全く偶然の所産としてしまうほどに偶然とも思われない。

このような種類の機微な吻合がしばしば繰り返されて、そしてその事が誇大視された結果としていわゆる厄年の説が生れたと見るべき理由が無いでもない。

ある柳の下にいつでも泥鰌が居るとは限らないが、ある柳の下に泥鰌の居りやすいような環境や条件の具備している事もまたしばしばある。そういう意味でいわゆる厄年というものが提供する環境や条件を考えてみたらどうだろう。

「思考の節約」という事を旗じるしに押し立てて進んで来たいわゆる精密科学は、自然界におけるあらゆる物並びにその変化と推移を連続的のものと見做そうとする傾向を生じた。そして事情の許す限りは物質を空隙のないコンチニウムと見做す事によってその運動や変形を数学的に論じる事が出来た。