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また、いえ

又、家

宮本 百合子

「宮本百合子全集 第十八巻」新日本出版社、1981(昭和56)年5月30日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,120 字 · 13 页

青空文庫

処が、思いがけない或休日、自分は時事で、実によさそうな広告を見つけた。

場所は、青山北町一丁目で、間数は五つ。電車の便利がよくて、家賃は僅かに四十五円と云うのである。現在、たった四間の家に五十円出して居る自分達にとっては、部屋が一つ多い上に廉いと云うことは、勿論少なからぬ魅力とならずには居ない。

私は、意外な発見に悦びと誇りとを感じ乍ら、それをAに見せた。

「ふーむ。悪くなさそうだね」

「場所だって丁度いいじゃあないの?」

「――行って見ようか」

彼は、急に興味を持ったらしい口調になった。

「どんな家だか――ただ、場所が如何にも工合よさそうだからね」

彼は立って、あわただしく身仕度を始めた。

「しかし、もう駄目かもしれないね」

我々は、一度目の経験で、斯様に、一寸でも目ぼしいと思うような貸家の広告は、如何程迅速に人々の注意を牽き、又交渉されるかを覚えて居た。

朝八時頃新聞を見、本郷から下谷の其処まで行くうちに、もう十幾人目かの人と、すっかり話が纏って仕舞った等と云うことさえ在ったのである。

ネクタイを結ぶ彼の傍に立ち、自分は、見てもしよいと思ったら、私に構わず定めておしまいなさい、とすすめた。