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はんこう

反抗

豊島 与志雄

「国民新聞」1921(大正10)年8月4日~11月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,121 字 · 282 页

青空文庫

周平は目高から眼を離して、後ろを振り返った。保子が室の中から彼を呼んでいた。

「退屈しのぎに、隆吉へ何か噺でもして下さいよ。」

「さあ……。」と周平は口籠った。

「どうせぼんやりしてるんだから、丁度いいじゃないの。」

「だって私は噺なんか一つも知らないんです。」

「神話みたいなものでも何でもいいわよ。」

周平は何とも答えなかった。話してやるものかと心で思っていた。そしてじっとしていた。然しもう保子は催促しなかった。隆吉の枕頭に半身で寝そべって、雑誌の小説を読み始めていた。周平は暫く待った後、妙に心が苛立ってくるのを感じて、ぷいと二階へ上ってしまった。

十九

一人になって考えると、なぜ隆吉に対してああ憎しみの情が湧いてくるのか、周平は自ら惑った。隆吉の存在を邪魔にする理由はいくら考えても正当には見出せなかった。彼は隆吉に対する気持を置き換えようとつとめた。

然しそれが出来なかった。病気がだいぶよくなった隆吉は、背を円くして日向の縁側に蹲まりながら、露な鋭い眼付をして周平の方を見上げた。周平が和らいだ顔付をしてると、外に出たいとか植物園や動物園に行きたいとか云って謎をかけた。