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はんこう

反抗

豊島 与志雄

「国民新聞」1921(大正10)年8月4日~11月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,121 字 · 282 页

青空文庫

……いつぞや、あなたは隆吉をそそのかして、吉川さんの写真を見ようとしたわね。あの時は何とも思わなかったけれど、今考えると、今度のことと全く同じ気持だったのでしょう。私思ってもぞっとする。あなたを側に置いとくことは、まるで探偵にでもつけられてるようなものだわ。」

周平は、頭の上から落ちかかってくる叱責の言葉を、一語々々味っていった。その苛辣な味に心を刺されることが、今は却って快かった。どうせ踏み蹂ってしまわなければならない恋だった。それを彼女の怒りによって踏み蹂られることは、寧ろ本望だった。彼はじっと眼をつぶって、絶望の底に甘い落着きを得てる自分の心を見戍っていた。――所へ、意外な言葉が落ちかかってきた。

「あなたは隆吉へどんな影響を与えてるか、気が付いていますか。」

周平はぼんやり顔を挙げた。保子は続けて云った。

「隆吉が可哀そうな身の上であることは、あなたにも始めから分っていた筈よ。私達はあの子に、その一人ぽっちの淋しさを忘れさせようと、どんなに骨折ったか知れないわ。そしてあの子が素直に快活になったのを見て、心から喜んでいたのよ。すると、この夏休みの前頃から妙に陰鬱になって、暗い顔をして考え込んでるのが時々眼につくばかりでなく、何だか始終私達に気兼ねでもしてる様子だし、またふいに、お父さんの話をしてくれとか