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はんこう

反抗

豊島 与志雄

「国民新聞」1921(大正10)年8月4日~11月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,121 字 · 282 页

青空文庫

周平は黙って杯の数を重ねた。

「井上さんは、」と保子が云った、「飲めないような顔をして随分飲めるのね。」

「飲めないような顔って、どんな顔なんです。」と周平は云った。

「あなたみたいな顔。鏡でみてごらんなさい。」

周平は突然不快を覚えた。彼は自分の顔立の欠点を知っていた――眉と眼との間が迫り、鼻がわりに長く、※(「臣+頁」、第4水準2-92-25)が短かった。それを今保子から軽蔑されたような気がした。何とか云い返してやりたく思ってると、横田が口を開いた。

「では、僕の顔はどんな顔なんだい。」

「銅像みたいですよ。酒なんかぶっかけても当分はげそうにないわ。」

「そんなに黒くなったのかな。」

「ええ、真黒よ。ねえ、井上さん。」

微笑んだ唇から白い歯を覗かして、軽く首を傾げてる彼女の姿を、周平はちらりと見やった。睫毛の影を宿した濡いのある眼が、彼の心を囚えた。彼は額が汗ばむのを覚えた。すると、俄に顔が赤くほてってるのを知った。彼女が云い出したのは、顔の恰好ではなくて色のことらしかった。それでも反抗的に云った。

「顔の批評は止しましょうよ。生れつきで自分でどうにも出来ないことだから。