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はんこう

反抗

豊島 与志雄

「国民新聞」1921(大正10)年8月4日~11月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,121 字 · 282 页

青空文庫

金があると気が大きくなった。金がなければ野村や其他の知人から五円十円と借り歩いた。無一文の時には、友人の誰かが何とかしてくれた。

彼は次第に、村田や其他の友人と近しくなっていった。あらゆる点で便宜だった。金の融通もついたし、面白くもあった。横田の書斎での真面目くさった彼等は厭だったが、酒杯の間にはめを外した彼等は愉快だった。彼等の方でも新米の周平を面白半分に引廻した。

「おい、井上、今晩探険に出かけないか。」

がやがやした騒ぎが静まると、彼等は興味の種を探すようにしてそう呼びかけた。

周平はどんよりした眼を見据えて黙っていた。

「井上は駄目さ。」と村田が云った。「北極も南極も嫌いで、なまぬるい温帯が好きなんだから。熱帯ならなおいいかも知れないが、そんなのは一寸手が届かない形でね。」

温帯というのは、素人とも玄人ともつかない女給仕連中のことだった。

そして実際彼女等のうちには、特殊な意味で深く周平の心を惹きつける者が一人居た。

三十一

電車道から奥へはいってる可なり広い横町が、他の裏通りと直角に交叉して斜左へ曲ってる、その角の所に、蓬莱亭という緑色に塗られた洋館があった。