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はんこう
反抗
豊島 与志雄
「国民新聞」1921(大正10)年8月4日~11月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,121 字 · 282 页
けれど……。
或る時、周平は二三の友人と共に、竹内から其処へまた引張ってゆかれた。竹内は酔っ払っていた。それでも飲み直した。「おい酒だ。」と竹内は叫んで、空になった桜正宗の二合瓶を打ち振った。それを女中共は笑いながら向うから眺めていて、更に取合わなかった。そこへ、二階からお清が下りてきた。竹内はその方へ瓶を振ってみせた。お清は階段の下に一寸立ち止って、じっとこちらを眺めたが、黙ったまま首を振った。その時の彼女の眼付が、保子そっくりだった。と周平が思ったのは瞬間で、彼女はそっと歩み寄ってきて竹内に云った。
「あなたはもうお止しなさい、酔うと癖が悪くていけないから。他の方には差上げるわ。」そして彼女は周平の方をじっと見た。「あなたはいくら飲んでも大丈夫らしいわね。」
周平はその調子に変な気がした。然し彼が更に驚いたのは、竹内がお清と非常に懇意らしいことと、皆がそれを別に怪しんでもいないらしいことであった。
竹内はどちらかというと、周平や村田などの仲間ではなかった。勿論、彼等と交際はしていたし、水曜日の横田の書斎へも二三度顔を出したことはあったが、学校を途中で止して、文士連中の臀にばかりくっついて歩いていたので、自然と彼の生活はその大部分が、彼等の視野の外にはみ出していた。