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はんこう

反抗

豊島 与志雄

「国民新聞」1921(大正10)年8月4日~11月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,121 字 · 282 页

青空文庫

自分自身が堪らなく惨めに思えたり、この上もなく悲壮に思えたりした。

そういう気持のうちに彼は、知らず識らずお清へ注意を向け始めていた。固より、彼の仲間は蓬莱亭へ行くことが少かったし、また彼は竹内のことから変に気がさして一人では行かなかったので、お清と顔を合せることはそう度々ではなかった。然し、彼女がどうかした拍子に保子そっくりの眼付をするのが、何となく気に懸った。がよく見ると、保子の眼は黒目がちであるのに、お清の眼は妙に黒目が小さく見えた。それがどうして同じような眼付になるのか、彼には分らなかった。

四五人で勝手な熱を吹いてると、お清は時々側にやって来て、一座の女王らしく取澄したり、または一人で話を奪っていったりした。話の調子が少し受太刀になってくる時には、簡単な京大阪の弁を真似てごまかした。「さかい……おます……だっせ……えろう……ほんまに……そない……やろ……」などの語を連発した。

「あんたそないなこといやはっても、ほんまのことではないさかい、駄目だっせ。」

それで皆はどっと笑った。彼女は一寸首を引込めたが、彼女の顔をじっと見ている周平の方へ向いた。