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はんこう
反抗
豊島 与志雄
「国民新聞」1921(大正10)年8月4日~11月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,121 字 · 282 页
」
「いや違う。空は晴れてやしないんだろう。」
「晴れてるさ。」
然し窓を開いて覗いてみると、外はただ真暗で、晴曇のほども分りかねた。冷やかな風が何処からともなく流れ寄ってきて、急に身体が寒くなった。
「おう寒いや。」
「だから熱いのを持って来たわ、気が利いてるでしょう。」
引き取って云った声の方を顧みると、お清の真白い顔が入口から覗いていた。
「なあんだ君か。」と村田が云った。「喫驚しちゃったよ。持って来たら早く出せよ。」
「取りにいらっしゃい。秘密のお話だから中にはいってはいけないんでしょう。」
「そうだそうだ。葷酒以外の者は何人もこの山門に入る可らず。取りに行ってやる。」
村田が立って行くと、お清は四、五歩退って、戸の外に出て来た村田の横をつとすりぬけ、室の中にはいり込んで、がたりと扉を閉めた。
「おい、冗談じゃない。開けろよ、早く。」
「開けないわよ。私井上さんと秘密の話があるんだから、誰もはいってはいけない。……ねえ、井上さん!」
酒を飲んだらしい赤味のさしてる真白い顔の中から、白目がちの澄んだ眼が、周平の方をじろりと見て笑っていた。周平は口が利けなかった。