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はんこう
反抗
豊島 与志雄
「国民新聞」1921(大正10)年8月4日~11月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,121 字 · 282 页
妙に話がはずまなかった。
その時、表からふいに飛び込んで来た男があった。扉をばたりと後ろに閉めて、つかつかとこちらへやってきた。それが竹内だった。
周平はぎくりとした。竹内も一寸狼狽したらしかった。が彼はすぐに、見開いてる輝いた眼を、金縁眼鏡の下に笑いくずしながら、皆の中にわり込んできた。
「馬鹿に寒い晩だね。外を歩いてると堪らなくなって、飛び込んできちゃった。」
「一人だったのか。」と村田が云った。
「え?」と竹内は怪訝な顔をした。
「一人とは珍らしいね。」
「なあに、いつも一人さ。井上君のようなわけには行かないよ。」
そのあてつけが周平は癪に障った。竹内はいつも、文士の誰かにくっついてるか、または友人の誰かと一緒になっていて、決して一人のことがないというのが、彼等の間の定評だった。竹内自身もそれを知ってる筈だった。そして、村田が云ったのは確にその意味に違いなかった。それを彼は変に皮肉にねじまげて、暗に周平を揶揄してきたのだ。周平はじっと彼の顔を見つめてやった。彼は素知らぬ顔をして隣りの者の杯を引ったくっていた。
「兎に角、内部から温めるに限る。」
そして彼は、三四杯たて続けに飲んで、それから勝手に皆の数だけ、ホット・ウイスキーを命じたりした。