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はんこう
反抗
豊島 与志雄
「国民新聞」1921(大正10)年8月4日~11月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,121 字 · 282 页
」
二人はそれきり黙って歩いた。然し云い合したように、別の心安いカフェーの前にいつしか出てしまった。
「まあ、暫くぶりね。」
顔馴染の女中にそう云われて、周平はただ苦笑した。お清の許へ行きつけてから、いつの間にか他の場所へは足が遠くなっていた。そのことが気持にこびりついてきた。
隅っこの小さな卓子を選んだ。客は込んでいなかった。二人の様子を見て、女中も遠慮してか寄って来なかった。
熱い珈琲を飲んでるうちに、周平は突然不安を覚えてきた。何か話があるのを云い出しかねてるような村田の様子だった。それが可なり重大なことらしかった。予め覚悟を強いられる気がした。彼はぐっと腹を据えて、がちゃりと珈琲皿を置いた。その音に室の隅から彼の方へ転じてきた村田の眼へ、何だい? と眼付で尋ねかけた。
村田は初めて我に返ったかのように、珈琲を一口飲み、煙草に火をつけた。が、言葉は直截だった。
「君は変な噂があるのを知ってるか。」
「誰の?」
「君自身のさ。」
周平は冷笑的に唇を歪めた。お清のことだなと思った。村田までそんなことを気にしてるのが可笑しかった。
「知ってるよ。」と彼は云った。