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はんこう

反抗

豊島 与志雄

「国民新聞」1921(大正10)年8月4日~11月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,121 字 · 282 页

青空文庫

低い曇り空の下に、薄明りの中に、何処となく夜明けの擾音が伝わってきた。雀の鳴く声が聞えた。周平は瞑想から醒めて、急に寒さを覚えながら窓を離れた。そして火燵の中に屈み込んだ。

打ち開いた窓から射し込む明りと消え残ってる電灯の光りとが、一つに融け合って、影のないだだ白い明るみを室の中に湛えた。夜とも昼ともつかない懶い明るみだった。その中で、お清はすやすや眠っていた。夜着から肩を半分出して、横向きに枕の上につっ伏していた。白粉汚れのした紫の襟から、頸筋の荒い肌が覗いていた。陰気な曇りを帯びた額に少し脂を浮べ、頬の所々に濃く白粉を寄せて、ぐったり疲れきってる様子だった。小さな口を心もち開いて、口からとも鼻からともなく、軽い細い息をしていた。

「おい、お清ちゃん。」と周平は呼んでみた。

囁くような低い声だったが、お清はそれと同時に、静かに眼を見開いた。……周平は息をつめた。彼女の眼覚めが余りに速かで静かだったばかりでなく、その眼が、眠ったままのその眼が、余りに大きくて安らかで美しかった。彼女はぼんやり彼の顔へ瞳を据えながら、口を開いて何やら言いかけた。瞬間に、彼は我を忘れて身を乗り出した。