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はんこう
反抗
豊島 与志雄
「国民新聞」1921(大正10)年8月4日~11月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,121 字 · 282 页
」
「それだけのことですか。」と周平は云った。
「まだ何かあると思って?」
そう反問されると、周平は返辞に迷った。最後の言葉が気にかかった。彼は保子の顔を眺めた。その口許の微笑が変に皮肉らしく、眼の光りが変に揶揄するように、彼には感じられた。彼はそういう風に保子から眺められるのがつらかった。凡てをぶちまけてしまおうかと思った。然しそれをじっと抑えて、漸くこれだけ云った。
「何かあるのなら、すっかり云って下さい。気持にこだわりが残るのは一番厭ですから。」
保子は黙っていた。美しい眉根を心もち上げて、眼をぱっちり見開いていた。周平は、その眼が自分の心に向けられてるのを感じた。彼はまた云った。
「何かいけないことがあったら云って下さい。私は奥さんから云われることなら本当の心で受けられる気がします。出来るだけ自分で自分を直したいんです。」
「じゃ何か困ることでもあるの。」
「え、私に?」
「ええ。」
「いいえ、何もありません。」と周平は答えた。
「それでは何か聞いたんでしょう。」
「いいえ。」と周平は答えた。
「では何か仕出来したの。」
「いいえ。」
「そんなら、何か気にかかることがあるのね。