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はんこう

反抗

豊島 与志雄

「国民新聞」1921(大正10)年8月4日~11月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,121 字 · 282 页

青空文庫

朝は遅くまで寝てることがあった。何をしても面白くなかった。勉強するのもつまらないような気がした。何を考えるともなくぼんやりしてると、いつのまにか保子の姿を思い浮べていた。次の瞬間には吉川の死のことを考えていた。そしてふと、隆吉が吉川と保子との子だったら……と空想した。

彼は自分で喫驚した。余りに馬鹿々々しかった。そしては、下らないことに頭を使うまいと努めた。けれども、意識して努めれば努めるほど、益々気持の上のこだわりが出来てきた。そして彼は、保子の温情を深く感謝し希求すると共に、一方では、保子の心に秘密な影を想像していった。それが自分でも妙に不安だった。

学校に出てもなんだかつまらなく、ノートを取ることにうんざりして、それかって友人との雑談にも気が進まなくて、彼は一人ぼんやり、池の縁の木蔭に屈み込むことが多かった。薄濁りのした水面には、朝日の光りが斜に落ちて、赤や黒の鯉の姿が、すーっと浮き出してはまた底の方へ消えていった。松を二三本のせた小鳥の影が、水の中二三尺位の深さかと思われる処に、影絵のように淡く映っていた。見るともなくそれに眼をつけている時、松の影がゆらゆらと動いて、油を流したように、保子の姿が水の面に漂った。