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おじ
叔父
豊島 与志雄
「改造」1925(大正14)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,585 字 · 24 页
髯のなさそうな皮膚に艶が褪せていた。
やはり俺の眼に誤りはない、とそう思う気持が眼付に籠っていった。と共に、笹部は、そして喜代子までが、その視線の下に変に固くなっていった。
共通に興味ある話題は一つも見付からなかった。中野さんは沈黙の中途でふと思い出したように尋ねた。
「君は一体、収入はどのくらいあるのですか。」
「殆んどありません。」と笹部ははっきり答えた。
「殆んどない……。」
「全く不定なんです。詩を書いたり童話を書いたりしていますが、いくらにもなりません。」
「それじゃあ困るな。どこかへ勤めたらよいでしょう。」
「うまく勤められそうにもありません。それで、これから小説を書いてみるつもりです。」
「ほほう、小説なら金になるでしょう。」
「それにしたって、大したことはありません。まあ一生貧乏するつもりです。貧乏は初めから覚悟していて、平気ですから。」
「それでもやはり、困るでしょうがね。……喜代子、お前は平気なのかね。」
「ええ。どうしても食べられなくなったら、あたし女中奉公でも女事務員にでもなるつもりですの。」
「それも今のうちはいいが……。」
子供でも出来たら……と云いかけて、中野さんはそれを呑みこんでしまった。