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とりかえしものがたり
取返し物語
岡本 かの子
「大法輪」1934(昭和9)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,882 字 · 28 页
(刀を抜いて源兵衛の首を打落す。袖を千切って首を包む。)
(幕、落ちる。)
(正面、三井寺の山門。左右へ厳重な柵が立ち並んでいる。柵内柵外の木々の紅葉は大分散り果てたが、それでもまだ名残の色を留めて居て美しい。柵の前に燃え尽きた篝が二三箇所置いてある。赤松の陰に「山門制戒」の高札も立っている。
法衣の上に頭巾、冑や腹巻をつけた法師が得物得物を執って固めている。武装した稚児も交っている。遠くで大勢の読経の声終る。)
法師一『何奴だ、そこへ来たのは』
源右衛門(刀を提げ立はだかったまま)『本願寺浄土真宗、本寺のものだ。山科より使いに来たと、和尚さんへ取次いで下せえ』
法師二『言葉も知らぬ下司なおやじ奴。その上に刃なぞ抜身で携げ、そもそも此処は何れと心得居る。智証大師伝法灌頂の道場。天下に名だたる霊域なるぞ』
源右衛門『言葉が悪くばあやまります。何はともあれ、お預け申した開祖様御影像を、礼物持って受取りに来ました。さっと此処を通して下せえ』
法師三『ならんならん』
法師一『狼藉いたさば、そのままには捨て置かんぞ』
法師二『比叡の山法師の拳固の味とはまた違った三井法師の拳固の味、その白髪頭に食って見たいか』