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くちぶえをふくぶし

口笛を吹く武士

林 不忘

「サンデー毎日」1932(昭和7)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,467 字 · 21 页

青空文庫

」

「今だって、尾羽うち枯らしておらんことはないよ。」

「自慢になりません!」

一角は、たまらなく焦いらして来て、そこに、まぐろが胡坐をかいたように、ぬうっと済ましてすわってるこの狂太郎を、力いっぱい突き飛ばしてやりたくなった。

二

「その、失礼ながら困っておられた兄者を、拙者が引き取って、こちらへおつれ申すとき、兄者は何といわれた。」

「四十余年、老措大――ってなことでも、口ずさんだかな。よく覚えておらん。」

「これからは、心気一転して、おおいに天下に名を成すよう、まず、振り出しに、この、吉良殿の護衛として、十分に働いてみると、あんなにお約束なすったではないか。」

それは、事実なのだった。

狂太郎も、すこし降参った表情で、がりがり大たぶさのあたまを掻いて、白いふけを一めんに飛ばしながら、

「ちょ、ちょっと待った! 腹の空いておったときにいったことは、言質にならんぞ。」

「かねがねおすすめしてあるとおりに、これを機会に、千阪様に知られて、小林殿の取り持ちで、上杉家へ仕官なさるお気はないのか。」

「ないことも、ない。」狂太郎は、困ったように、「が、この年齢になって、宮仕えというのも――三日やると、止められんのが、乞食と居候の味でな。