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ふるきミニエチュア

古き小画

宮本 百合子

「小樽新聞」1924(大正13)年1月14日~3月9日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 70,298 字 · 140 页

青空文庫

黙って、考えている積りのうちに、彼の纏布を巻いた小さい頭の中には、ぼんやりと、昼間の狩の思い出や、明日の遠乗の空想が湧き上って来る。シャラフシャーは、彼の恍惚(うっとり)とした口つきと、次第次第に面を輝かせる生活の楽しさとを見逃さない。スーラーブは、巧にシャラフシャーが持ち出した新しい話題に全心を奪われ、数分前の拘(かかわ)りを、さらりと忘れてしまうのであった。

然し、それで紛れきってしまうには、彼の受けた感銘が余り強すぎた。ふと、思い出し、急な不安を感じ、スーラーブは同じ問いを母にも持ち出した。

彼は、本能に教えられ、シャラフシャーに対する時よりずっと甘えて、直截に、

「母上、スーラーブの父上はどうしたの? 祖父様はこわい顔をして『父のない息子を見よと云われるな』とおっしゃった。父上は始めっからいないの? 死んだの?」

と、迫る。

始めて、この問いを受けた時、ターミナは、スーラーブが思わず、喉をゴクリといわせたほど、驚きの色を示した。彼女は、スーラーブの傍に躙(にじり)より、手を執り、誠を面に表しながら、彼は今も昔もサアンガンに唯一人の偉い王になるため、天から遣わされた者であるということ、その命令を成就させるために、母もシャラフシャーも心を砕き、神への祈りを欠かしたことはないのだ、と話して聞かせた。