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ふるきミニエチュア
古き小画
宮本 百合子
「小樽新聞」1924(大正13)年1月14日~3月9日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 70,298 字 · 140 页
そして、卑下したり、自分から褒めあげたりしながら、荷嚢から、幾個(いくつ)もの小袋を引出し、特別に調えた天鵞絨(ビロード)の布の上に、種々の宝石を並べた。それを引きながら、スーラーブの前に近く躪(にじ)りより、下から顔を覗き、身振をし、宝石の麗わしさ、珍らしさなどを説明する。
スーラーブは、寧ろうるさく、速口の説明をきき流した。けれども、流石(さすが)に、宝石の美しさは、彼を歓ばせた。
小柄な黒い眼の男が、器用にちょいと拇指と人さし指との先につまんで、日光に透し、キラキラと燦めかせる紅玉や緑玉石、大粒な黄玉などは、囲りの建物の粗い石の柱、重い迫持と対照し、一層華やかに生命をもち、愛らしく見える。母のためにと思って、スーラーブが蕃紅花(サフラン)色の水晶に目をつけると、商人は、いそいで別な袋の底をさぐり、特別丁寧に、羊の毛でくるんだ一粒の玉を出した。
十四
彼は、ありもしない塵を熱心に宝石の面からふき払うと、それをスーラーブの眼の前につきつけた。
「如何でございます。これこそ、若い、勲(いさおし)のお高い君様になくてはならない、という飾りでございましょう。