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ふるきミニエチュア
古き小画
宮本 百合子
「小樽新聞」1924(大正13)年1月14日~3月9日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 70,298 字 · 140 页
「何と云ったか、その種々に光る石は、美しいことも美しいが少し高価すぎる。考えて置くから、まあ悠くり滞留するがよかろう」
スーラーブは、立ったまま、代として渡す羊について一言二言つけ加え、広間を去った。
十六
これ迄になく、スーラーブは、半月余も宝石売を城に止めて置いた。その間彼は、朝の遠乗をすますと買おうとする宝石の撰択をきっかけにしては、一日の幾時間かを、宝石売とシャラフシャーと三人で過した。そして、好い機会があると逃さず、イランのこと、ルスタムのこと、或はその他の国々の様子を訊く。
彼が、宝石より何より、それ等の話を聴きたいばかりに、宝石売を止めて置くことは、明かであった。然し理由は、シャラフシャーにさえ説明しない。もとより、スーラーブは、悪賢い旅商人などの云うことを、何処まで信用してよいものか、弁(わきま)えるべきことは知っていた。けれども、意外の事実を知った時に来合せた。とにかく城内の誰より、イランに就ては詳しい話を聞かされると、彼は、どうしてもそれに無頓着ではいられなくなった。スーラーブは、父に対して当途のない感動に燃えていた思慕の心が手がかりを得、実際の纏った力となろうとして頻りにうごめき出したのを感じた。