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ふるきミニエチュア

古き小画

宮本 百合子

「小樽新聞」1924(大正13)年1月14日~3月9日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 70,298 字 · 140 页

青空文庫

黎明が重い薄明りを歩廊に漂わせ始める前に、スーラーブの心の中では、ちゃんと、アフラシャブに対する策から、凡そ出発の時日に関する予定まで出来た。スーラーブは賢い軍師のようにうまいことを思いついた。それは手におえないアフラシャブを、逆に利用すること――自分ではなるたけ痛い目を見まいとするアフラシャブは、サアンガンが立ったときけば、きっと、それを足場にして、利得を得ようとするだろう。イランを、仮にも攻撃すると信じさせるに、サアンガンの軍勢ばかりでは余り貧弱だ。アフラシャブは、サアンガンの兵に混ぜて自分の勢力をイランに送って置けば、何かの時ためになると思うに違いない。ツランの力を分裂させるためにも、万一父の必要によって、その勢いを転用するにも都合がよい。加勢を、無頓着に受けてやろう、という考えである。互に連絡を持ち、敷衍されて行くうちに、策略の全体は、益々確かりした、大丈夫なものに思われて来た。

スーラーブは、自分の決意と、着想に深く満足した。すっかり夜が明け放れたらしようと思うことを順序よく心に配置し、彼は、誰にも見られず、自分の寝所に戻った。

ほんの僅かの時間であったが、スーラーブは、近頃になく、四肢を踏みのばし、前後を忘れて熟睡した。