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ふるきミニエチュア

古き小画

宮本 百合子

「小樽新聞」1924(大正13)年1月14日~3月9日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 70,298 字 · 140 页

青空文庫

道路が険阻な崖にでもさしかかると、甲高いせわしい声で乗馬を励まし、頻りに唾をはいた。そしてルスタムが、何故、ラクーシュに騎って来ないか、繰返し繰返し尋ねた。

王との応対は、ルスタムにとって忍耐を要する一つの義務であった。けれども、長距離の騎行と、晴れた夏の星夜の下の露営は、彼によい結果をもたらした。

彼は、シスタンの城にいる時よりは、ずっと沢山食った。若い者のように、ぐっすり眠った。そして道の工合が好かったりすると、彼は何ともいえない身軽な快活な衝動にかられて、馬を※でかけさせながら、軍列を前後に抜けた。ギーウはそれを見て微笑した、猛々しい猟犬が、老いても尚角笛を聴くと気負い立つように、ルスタムには何といっても戦場の雰囲気が亢奮剤になるのを認めたからであった。四昼夜の後、イラン軍はツラン軍の陣どった高地から一ファルサングの地点に到着した。ルスタムは、元気よくギーウを助けて隊列を二分し一部を率いて更に五百ザレほど前進した。そこからは、もう明かに敵陣が見えた。

イラン勢はそこに止った。そして勢いよく羯鼓を打って示威運動を始めた。

ツラン方も、待っていた敵を迎え喜びに堪えないように太鼓を鳴し鐃※を擦り合せてそれに応えた。