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ふるきミニエチュア

古き小画

宮本 百合子

「小樽新聞」1924(大正13)年1月14日~3月9日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 70,298 字 · 140 页

青空文庫

の下で祖父の屍を荼毘(だび)にした火の色。黒煙を吐きながら赤い焔の舌が、物凄い勢いで風のまにまに雪の面に吹きつけた光景や、今、広場の端迄延びたかと思うと、忽ちどっと崩れて足許に縮む影法師の中を入り乱れ、右往左往した多勢の男達の様子が、それがすんだ朝になると、スーラーブにはこわい、一つの夢のようにさえ思われた。

けれども、夢でなかった証拠には三日三夜の退屈至極な儀式が彼を捕えた。昼間一杯と夜の三分の一ほど、スーラーブは、数多(あまた)の家臣の先頭に立って、シャラフシャーの云う通り、

「我等の神、ミスラ、汝の嫡子、サアンガンの王の王」と、大きな声で繰返したり、理由のわからない面倒な手順で、石の平べったい台の上に、穀物や、乾果や、獣肉を供えなければならない。

それにも拘らず、スーラーブの心には、ちょいちょい、祖父が死に際に云った言葉が蘇って来た。そして、彼を不安にした。

何かしている最中でも、ふと、「父のない息子を見よ、と云われるな」という文句をまざまざと耳元でささやかれるように感じる。瞬間、彼は何も彼も放ぽり出して、後を振向いて見たいような衝動を覚えた。