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こだいこくごのおんいんについて
古代国語の音韻に就いて 他二篇
橋本 進吉
橋本進吉『古代国語の音韻に就いて 他二篇』。同一底本的分册已合并为一书。收入:古代国語の音韻に就いて、国語音韻の変遷、駒のいななき。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 94,329 字 · 188 页
(二)「え」にあたる二つの音、(すなわちア行のエとヤ行のエ)の区別は、平安朝に入ってからも初の数十年はなお保たれて仮名でも書きわけられていたが、村上天皇の頃になると全く失われたようである。伊呂波歌以前に、伊呂波のように用いられた「あめつち」の頌文は四十八字より成り、伊呂波より「え」の一字が多く、「え」が二回あらわれているが、これは右のア行のエとヤ行のエとを代表するものと認められ、その四十八字は(一)に述べたような音変化を経て、まだ「え」の二音の別が存した平安朝初期の音韻を代表するものである(ただし、濁音はそのほかにあるが、清音の文字で兼ねさせたのであろう)。伊呂波歌はこの二音が一音に帰した後の音韻を代表するものである。さて、「え」の二音すなわちeとyeとが同音となって、どんな音になったか。普通常識的にe音になったと考えられているようであるが、必ずしもそうとはいえない。古代の国語では、母音一つで成立つ音が語頭以外に来ることは殆どないのであって、ただ「い」(i)と「う」(u)の場合に極めて少数の例外があるに過ぎない。「え」の二音のうちのeもまた語頭にのみ用いられた。