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こてんふう

古典風

太宰 治

「知性」1940(昭和15)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,400 字 · 21 页

青空文庫

庭を掃き掃き、幾度も首をふって考えた。この、謂わば悪魔のお経が、てるの嫁入りまえの大事なからだに悪い宿命の影を投じた。

C

私をお笑い下さいませ、毎夜、毎夜、私は花とばかり語り合って居ります。あなたさまをも含めてみんなを、いやになりました。花は、万朶のさくらの花でも、一輪、一輪、おそろしいくらいの個性を持って居ります。私は、いま、ベッドに腹這いになって、鉛筆をなめなめ、考え考えして、一字、一字、書きすすめ、もう、死ぬるばかり苦しくなって、そうして、枕元の水仙の花を見つめて居ります。電気スタンドの下で水仙の花が三輪、ひとつは右を向き、ひとつは左を向き、もうひとつは、うつむいたまま、それぞれ私に語ります。右を向いている真面目の花は、わかっているわよ。けれども、生きなければなりませぬ。左を向いている活溌の花は、どうせ、世の中って、こんなものさ。うつむいている少し萎れかけた花は、おひめさま、あなたは花ほどのこともないのね、申しました。生れながらの古典人、だまっていても歴史的な、床の間の置き物みたいな私たちの宿命を、花さえ笑って眺めて居ります。