轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
こぼく
古木
豊島 与志雄
――近代説話――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,648 字 · 24 页
それを心のように追っているうち、巳之助はふしぎにも、美智子から頭を撫でられたことを思い出しました。そして自分も手をあげて、はげた頭をつるりと撫でてみました。
それまでのすべてが、巳之助には夢のようにも思われました。それを心で見つめていますと、時間が止ったような工合になりました。
「美智子ちゃん……美智子ちゃーん……。」
中村家の子供が二人、庭で美智子を呼びました。美智子はその方へ行ったようでした。そして三人は椎の木のところに集ったようでした。
そこで彼等がしてる遊びの一つを、巳之助は知っていました。――椎の木の樹皮がはがれて、木質が露出してるところに、彼等は白墨でいたずら書きをしました。それから次には、ナイフを持ち出して、そこに、各自の名前を、片仮名で彫りつけはじめました。
巳之助が栗野老人に、切株を二三尺残すよう頼んだのも、そこを晩酌の席などにするつもりではなく、子供たちの遊び場所にしてやるつもりだったのです。
今もまた、子供たちはそこで遊んでいました。巳之助は眼をつぶって、子供たちの声を聞き取ろうとしましたが、何にも耳にはいりませんでした。
巳之助は思い出したように、禿げ頭を掌で撫でてみました。