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よしだしょういん

吉田松陰

徳富 蘇峰

「国民之友」1892(明治25)年5月~9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 135,622 字 · 269 页

青空文庫

これ則ち孝行と申すものなり。

これ実に彼が二十五歳の時にものしたるもの、その深き言外の真情はいうも愚か、その用意の懇切周到なる、如何に国家を懐うの彼は、かくまで家庭の事に濃かなる思いを凝したるぞ。

また安政六年四月十三日、同じく野山の獄中よりその妹に与えたる書簡あり。

この間は御文下され、観音様の御せん米三日のうち精進にていただき候ようとの御事、御深切の御こころざし感じ入り申し候。精進潔斎などは随分心の堅まり候ものにてよろしき事とぞんじ候に付き、拙者も二月二十五日より三月晦日まで少々志の候えば酒肴ども一向給べ申さず、その間一度霊神様御祭のもの頂戴致し候ばかりにて御座候。まして三日の精進は左までむつかしき事にもこれ無く、御深切の事に候えば相果したく存じ候えども、当所にては当り前の精進の外にまた精進と申し候えば、連中または番人ども何故かと怪しみ尋ね候に付き、それをそれと相こたえる事面どうに存じ候。八日は幸い御精日なれば、その日一同にいただき申し候〔赤子の心を見るが如し、松陰の天真爛漫たる処、ここに在り〕。そもそも観音様信仰せよとの仰せは、定めて禍をよけるためにあるべく、これには大きに論ある事に候えば、委細申し進ずべく候。