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よしだしょういん
吉田松陰
徳富 蘇峰
「国民之友」1892(明治25)年5月~9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 135,622 字 · 269 页
これを方便とも申し候。ここにおいて法華経の都上のたとえこれ有り。至極面白く候えども長ければ略し申し候。さてまた大乗と申し候時は、出世法と申す事が肝要にて御坐候。出世と申し候ても立身出世など申す事には御坐なく候。その初めは釈迦が天竺王の若殿に候処、若き時から感心のつよき人にて、老人を見れば吾身も往先は老人に成るかと悲しみ、死人を見ては吾身も往先は死のうかと悲しみ、虫けらの死んだの草木の枯れたのまでに悲しみを起し、是非に生老病死がこの世の習なれば、この世を出でねばすまぬと志を立て、年二十五の時位を棄てて山へ入り、右の生老病死を免れる修行をしに参られ候。
これにも色々ありがたき話あれども、事長ければ略す。
左候て、三十出山とて僅か五年の間に生老病死を免れる事を悟り、生れもせねば老いもせず病も死もせぬ事を悟りて出で来りて、それから世の人を教化せられた。これが出世の法じゃ。故に出生せねば済世が出来ぬと申すもこの事なり。済世というは則ちこの世の人を済度する事に御坐候。さてその死なぬと申すは、近く申さば釈迦の孔子のと申す御方には、今日まで生きて御坐る故、人が尊とみもすればありがたがりもおそれもする、果して死なぬではないか〔一種霊魂不滅の観念〕。