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よしだしょういん

吉田松陰

徳富 蘇峰

「国民之友」1892(明治25)年5月~9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 135,622 字 · 269 页

青空文庫

するもの、豈に独り露人のみならん。四方の外夷、我に意あるもの、踵を接して起らん」と。蓋し彼は蝦夷総督川尻筑後守と相謀り、カムサッカを襲い、直ちに露人立脚の地を奪わんと欲したるなり。壮志蹉行われずといえども、護国的精神、敵愾的気象は、沸々として時勢の児の血管中に煮え騰れり。

かくの如く一方においては、露国の警急なると共に、他方においては英船文化五年(千八百〇八年)長崎に入り、港内を剽掠し、ために長崎奉行松平康英をして、自殺してその機宜を失するの責を幕府に謝せしめたりき。されば幕府は奥羽諸藩を催して、函館を護らしめ、西国諸大名に令して長崎を警せしめ、文化七年においては、松平定信は、松平容衆と共に房総海岸の防禦を命ぜられ、ために東京湾の砲台を築かしめ、人心も何となく洶々たらんばかりの有様とはなりぬ。蒔くものは、穫らざるべからず。今や徳川幕府も、二百年来の悪因果たる鎖国の苦がき経験を嘗めねばならぬ時とはなれり。

国外の警報は、直ちに対外の思想を誘起し、対外の思想は、直ちに国民的精神を発揮し、国民的精神は、直ちに国民的統一を鼓吹す。国民的統一と、封建割拠とは、決して両立するを容さず。