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きらこうずけのたちば

吉良上野の立場

菊池 寛

在线阅读菊池 寛《吉良上野の立場(きらこうずけのたちば)》,假名注音日语阅读。JLPT N2,点词查义。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,369 字 · 24 页

青空文庫

「しばらく、どうぞ明日の」といって、右手で上野の袖をつかんで引いた。

「何をする!」上野は、腕を振って、大声を出した。腕が内匠頭の手に当った。

「何一つ、わしのいうことをきかずにおいて、今更のめのめと何をきく?」

上野が、大声を出したので、梶川が襖を開けて、顔を出した。内匠頭は蒼白になっていた。

「わしを、あるか無しかに扱いながら、自分が困ると、袖を引き止めて何をきくか?」

上野は、内匠頭がだまっているので、

「ばかばかしい!」と呟いて、行き過ぎようとした。

「教えて下さらんのか?」

「教えて下さらんというのか、内匠、貴殿、わしが教えてきいたことがあるか?」

「明日のことは、儀式のことにて、公事ではござらぬか」

「公事なればこそ、先刻通達したときに、なぜききもらした?」

「それは、拙者の不念ゆえ、お教えを願っているのに」

「貴公の不念の尻拭いをしてやることはない!」上野は、そういって歩き出した。

「教えんと、おっしゃるのか」内匠は、後から必死の声で呼んだ。

「くどい!」

「公私を混同して……」と、内匠がいうと、

「それは、貴公だろう。金の惜しさに、前例まで破って!」

「何!」