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めいしょうまんげつ
名娼満月
夢野 久作
「富士」1936(昭和11)年4月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,840 字 · 37 页
近郷近在の無頼漢を集めて御本堂で賭博を打たせ、寺銭を集めて威張っている。自分も相当の好きらしく時々寺銭を賭っているそうなが、不思議な事にこの坊主を負かすと間もなく、御本堂がユサユサと家鳴り震動して天井から砂が降ったり、軒の瓦が辷ったりする。その物すごさに一同が居たたまれずに逃げ出すと、又、間もなく静まり返るので、打連れて本堂に引返してみると、こは如何に。今まで山のように積んであった寺銭も場銭も盆茣蓙も、賽目までも虚空に消え失せて、あとには夥しい砂ほこりが分厚く積っているばかり。それが恐ろしさと馬鹿らしさに皆、忘れても和尚を負かさぬように気を付けているが、それでも時々大地震のような家鳴、震動が起るので、事によるとやはり狐狸の仕業かも知れない。とはいえ場所はよし、和尚の取持はよし、麓の一本道に見張りさえ付けておけば、手入れの心配は毛頭ないので、入れ代り立代り寄り集まって手遊びするものの絶えぬところが面白い。もちろんそのような家鳴、震動の度毎に、麓の百姓に聞いてみても、そんな地震は一向知らぬという話。ナント面妖な話ではないかえ。その狐か狸かが渫って行った金高を集めたなら、大したものづら……といったような話を、頭に刻み込み刻み込み行くうちに銀之丞は、いつの間にか菊川の町外れを右に曲って、松の間の草だらけの道を、