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ごせいげん
呉清源
「文学界 第二巻第一〇号」1948(昭和23)年10月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,333 字 · 11 页
最後のトコトンまで、勝負に、くいついて、はなれない。この対局の第一日目、第二日目、いずれも先番の本因坊に有利というのが専門家の評で、第一局は本因坊の勝というのが、すでに絶対のように思われていた。三日目の午前中まで、まだ、そうだったが、呉氏はあくまで勝負をすてず、本因坊がジリジリと悪手をうって、最後の数時間のうちに、自滅してしまったのである。
もとより、勝負師は誰しも勝負に執着するのが当然だが、呉氏の場合は情緒的なものがないから、その執着には、いつも充足した逞しさがある。坂田七段は呉清源に気分的に敗北し、勝っている碁を、気分によって自滅している。呉清源には、気分や情緒の気おくれがない。自滅するということがない。
将棋の升田は勝負の鬼と云われても、やっぱり自滅する脆さがある。人間的であり、情緒的なものがある。大豪木村前名人ですら、屡々自滅するのである。木村の如き鬼ですら、気分的に自滅する脆さがあるのだ。
それらの日本的な勝負の鬼どもに比べて、なんとまア呉清源は、完全なる鬼であり、そして、完全に人間ではないことよ。それは、もう、勝負するための機械の如き冷たさが全てゞあり、機械の正確さと、又、無限軌道の無限に進むが如き執念の迫力が全てなのである。