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わせいつばきひめ
和製椿姫
大倉 燁子
「仮面 三巻三号」1948(昭和23)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,221 字 · 19 页
「浚った人から何とか云って来ましたか? お金をよこせとか何んとか」
「まだ何とも云って来ませんよ」
「では何を目的で御病人を連れ出したりしたんでしょう?」
「まさか、あんな病人とは知らずにやったんでしょう。馬鹿な奴だ」と吐き出すように云って、
「人の口さえうるさくなかったら、反って有難い位なんだけれどね。世間っていう小姑があるから――、それだけを僕は恐れているんですよ」
私は彼と友達でなかったら、一言で拒絶してしまうのだったが、こういう人を頼っていた美耶子の事を思うと、彼女がいままでにどんなに冷めたい待遇を受けていたかが想像されて、浚われたということが果して彼女にとって不幸なのか、幸福なのかわからなくなった。しかし、もし連れ戻すことが彼女にとって幸福ならば、彼の依頼のためではなく、私は彼女のために努力してみようと決心した。
「失踪前後の事や、何か手がかりになるお心あたりの事でもあったら話して下さいね」と云うと、彼は天井を向いて考えていたが、
「まず、昨今の宅の経済状態からお話ししなくてはなりますまい。美耶子はあの通り贅沢好きで、いまの時代にも昔と変らぬ生活をしないと機嫌が悪い人です。