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もふく
喪服
久生 十蘭
「文學界」1957(昭和32)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,793 字 · 24 页
浜口 お前のことをどうこういっているわけじゃない。原理はまアそういったもんだということさ……美紗は朝食に来ないのか。
静江 どうかしら。
浜口 (かつに)美紗を呼んできなさい。
かつ かしこまりました。(行きかける)
八穂 行ったって無駄だよ。
静江 なんです、そのおっしゃりようは。
八穂 お呼びになっても、おいでになりませんでしょうと思います。
浜口 (静江の顔を見る。それから八穂に)なにかあったのか。
八穂 なにがあったと聞かれたって、ゴタゴタしているから、ひと言ではいえない。
浜口 ひと言でなくてもいい。
八穂 一郎さんがこんどバンド・マスターになって、なんとかレコードの専属になるとか、なりそうだとかいうことで、ママやあたしたちでお祝いの会をやったの。
浜口 (静江に)バンド・マスターって、なんだ?
静江 楽団の指揮者のことです。
浜口 そんなことがめでたいのか。
静江 めでたい、なんていうことじゃないでしょうけど、一応、認められたことになるんですから。
浜口 認められちゃ困るんだ……(八穂に)それで?
八穂 一郎さん、たいへんな人気だということは嘘じゃないの。コルネットを吹くプレスリーといったぐあい……