轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
とらわれ
囚われ
豊島 与志雄
「早稲田文学」1915(大正4)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,848 字 · 42 页
私は苦しいんですから、そして迷ってしまいますから。偽りが一番今の私にはつらいのです。」
「もうそんなことを云うのは止しましょう。」と孝太郎は云った。「私達の間に何の虚偽があったでしょう? 種々な言葉を玩ぶより黙っていましょう。ねえ、黙っている方が心が静まるでしょうから。」
「ええ、」と富子は低く答えた。
「ただあなたは自分のお心を静に保っていらるればそれでいいのです。何にも考えないで心を静にしておいでなさい。そのうちには恒雄さんだって……。」
「恒雄!」と富子は思わず叫んだ。そして身を堅くしてきっと孝太郎を見た。然しそれは一瞬のうちに過ぎ去った。彼女はまた力なく首垂れてしまった。
「どうなすったのです。」と彼はきいた。
「いいえどうも。」
「私は恒雄さんを信じています。」
富子は眼をあげてただじっと孝太郎を見た。
「此の頃では、」と彼女は云った、「何かしきりに考え事をしているようです。そして怒ることがよほど少くなりましたけれど……。」
「けれど?」
「私には温くして貰うより、冷たくして貰う方がいいんです。」
孝太郎は一寸身を震わした。そしてじっと彼女を眺めた。その頬から頭への肉付を見ていると、何か悩ましいものに襲われた。