轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
とらわれびと
囚われ人
豊島 与志雄
「群像」1952(昭和27)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,109 字 · 35 页
煙吉――この煙吉から見ると、みんな可笑しいや。正夫君に未練たらたらで、そして正夫君を自分のものにしようとかかっている。俺はそんなことは企らまないよ。どうせ世の中は成るようにしかならないものだ。正夫君と別れようとどうしようと、まったく平ちゃらさ。正夫君だってそうだろう。
正夫は顔を挙げて、煙吉を不思議そうに眺め、皮肉な薄ら笑いを浮べるが、それにも拘らず、溜息をついて、また顔を伏せてしまう。その方を、煙吉はちらりちらり見やって、腕組みをする。
煙吉――正夫君、君はずいぶん煙草が好きなようだが、吸いすぎると体に悪いよ。煙草は口臭を去るとか、空腹の助けになるとか、考えごとをまとめるとか、いろんなことが言われてるが、それも適度な場合だけだ。吸い過ぎると、食慾が無くなるし、注意力が散漫になるし、記憶力が減退する。この俺が言うのだから、間違いはないよ。口臭を去るどころか、正夫君、君の口はひどく臭くなってるし、舌はざらざらに荒れてるし、歯は脂で真黒だ。少し慎しんだらどうかね。それに、ニコチンの害毒はひどいからね。
煙吉は向きを変えて、そばに突っ立ってる者たちを眺める。