轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

とらわれびと

囚われ人

豊島 与志雄

「群像」1952(昭和27)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,109 字 · 35 页

青空文庫

煙吉――誰だ、髪の毛を引っ張るのは。

愛子――だめよ、髪の毛なんか引っ張っちゃあ。

時彦――いたずらは止せよ。

その都度、互に顔を見合せて、怪訝な面持ちになる。

時彦――どうもおかしいぞ。俺たちは誰も、ひとの髪の毛なんか引っ張ってはいないね。そして誰からか引っ張られてる。振り向いても誰もいない。然し引っ張られてることは確かだ。これは、酔っ払ったせいじゃない。何かある。奇怪極まる。

愛子――なんでしょうね。あたしなんだか怖くなっちゃった。

酒太郎――なあに、こんどやったら、俺が引っ捕えてみせる。

煙吉――世の中には理外の理ということもある。お化じゃないか。お化だったら面白いぞ。お化、出て来い。

何かの気配を感じて、警戒するかのように、一同は一つ所に寄り集まる。

一同の正面、つまり正夫を背後にして円卓の一端に、ぼんやりと人影が現われる。白髪の老女で、薄鼠色の和服を着ているが、全体がぼやけて形体は定かでない。――このあたりから、正夫は顔を挙げて、やはり卓上に頬杖をついているが、眼は伏せず、一同の方をぼんやり眺めている。

老女――お前さんたちの髪の毛を引っ張ったのは、このわたしだよ。