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とらわれびと
囚われ人
豊島 与志雄
「群像」1952(昭和27)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,109 字 · 35 页
議一――あ、いけない。しまった。
議一は窓へ駆けつける。一同も駆けつける。他の窓も開けて、外を透し見る。
議一――ここは四階だ。無事に飛び降りられるものではない。体は粉微塵だ。行ってやろう。
一同は足をめぐらして、窓と反対側にある扉を開き、廊下へ出て行く。
その時私(筆者)は、彼等の足音ばかりでなく、他のざわめきをも、確かに聞いた。眼に見える彼等ばかりでなく、他に多くの者が室内にいたに違いない。そして正夫は、それら多くの者の前に、曝しものとなっていたのであろう。それを思って、私はぞっとした。だが、一人残らず皆が出て行った後、室内はしんしんと静まり返り、更に深く静まり返ってゆくのが、耳にも感じ肌にも感じられて、何とも言えない恐ろしい思いだった。開け放されたままの窓から、開け放されたままの扉へと、冷たい夜気が流れていった。ふと見廻すと、円卓の上の饗宴の品々は、奇蹟のように消え失せていた。どうなったのであろうか。まさか彼等は魔法使ではなかったろうが、不思議極まる事態だった。考えてる時、また奇怪にも、天井の電灯がふっと消えた。室内は闇にとざされた。
寸時の躊躇の後、私は手探り足探りで、窓の方へ近づいて行った。