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とらわれびと

囚われ人

豊島 与志雄

「群像」1952(昭和27)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,109 字 · 35 页

青空文庫

然し、そういう体の姿勢、そういう精神の在りかたが、君がやはり僕たちの仲間だとすると、実は心配になるんだ。それは取りも直さず、病気か衰弱の兆候だからね。もう暫くこうしていたいとは、いったい何事だ。自滅を待つばかりじゃないか。

議一は激しく卓を叩く。正夫はちらと顔を挙げるが、また顔を伏せて、静かに言う。

正夫――僕は無理に死のうとは思わないし、それと同じ程度に、無理に生きようとも思わない。

議一――ばかな。万事無抵抗主義で、万事成り行きに任せるというのか。そんなら君の、あの積極的な、反暴力思想、反権力思想は、どこへ行ったんだ。病気か衰弱か知らないが、へんに投げやりなところが君には見える。どうしてそうなったんだ。何が君をそうさせたんだ。投げやりの気持ちは、自暴自棄よりも一層悪い。自暴自棄には少くとも、何物かに対する一種の抵抗がある。投げやりには何もない。頽廃ほどの気慨さえない。君のうちにはなにか、深淵みたいなもの、空洞みたいなものがある。

――それで分ったよ。君が文化会議に殆んど出て来なくなった理由も、その他の会合にも殆んど出席しなくなった理由も、よく分った。