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よんじゅうはちにんめ
四十八人目
森田 草平
「改造」1929(昭和4)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 56,183 字 · 112 页
「おい呼売、一枚くれ!」と喚んだ。
「へえありがとうさま、一枚! もう後は五六枚しかありませんよ」
彼は手に掴んだ小銭を渡して、それを受取るなり、群集の眼を恐れるように、こそこそと薄暗い横丁へはいって行った。ひろげてみると、なるほど大石内蔵助をはじめ寺坂吉右衛門に到るまで――中にはもちろん間違ったのもあるが――同志の名をずらりと並べて、この方々は、去年三月殿中において高家の筆頭吉良上野介に斫りつけ、即日切腹、お家断絶となった主君浅野内匠頭の泉下の妄執を晴さんために、昨夜吉良邸に乗こんで、主君の仇上野介の首級を揚げ、今朝泉岳寺へ引取って、公儀の大命を待っている。お上ではただ今老中方御評議の真最中だと、事の概略が載せてある。
「さては首尾よく仇を討たれたか……そして、予定のごとく泉岳寺へ……」
彼はその華々しい進退行蔵を目の当り見るような気がした。堀部安兵衛武庸の名も出ている、横川勘平宗房の名も出ている。が、毛利小平太の名は? もちろん、そこに出ていようはずはない。彼は義士たちの明るい功名を想いやるにつけて、いよいよ自分の眼の前が暗くなるような気がした。