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よんじゅうはちにんめ

四十八人目

森田 草平

「改造」1929(昭和4)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 56,183 字 · 112 页

青空文庫

が、すぐにまた踏みとどまって、

「そうだ、これを最後に逢いに来たのだ。せめてよそながらでも顔を見て行こう」と呟いた、そして、考えなおしたように、また女の家に近づいて行った。が、すぐに戸口をはいろうとはしないで、積った雪を踏んで裏手の方へ廻ってみた。おしおの家の裏手には長屋じゅうで使うようになっている釣瓶井戸があった。小平太はそのそばに立って、月影を避けるようにしながら、じっと家の中に耳をすました。が、家の中はしんとして物音一つしない。そのうちに、窓の障子に女の影が射して、それが消えたかと思うと、「ちーん!」と鈴の音が聞えてきた。

「そうだ、今日はおしおの母の三七日だ! 仏壇にお灯でもあげているのだな」

が、おしおは下に坐ったまま、なかなか立ち上らない。小平太は窓のそばへ寄って覗いてみようかとも思ったが、長屋の者が水汲みにでも出て、見つけられたらというような気がして、じっと我慢して立っていた。が、たまらなくなって、一歩ずつだんだん裏の戸口に近づいた。そして、そっと戸の隙間から覗いてみようとした時、不意におしおの立ち上る気はいがした。どうもこちらへ近づいてくるらしい。