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よんじゅうはちにんめ
四十八人目
森田 草平
「改造」1929(昭和4)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 56,183 字 · 112 页
日夜その機会を覘っていて、それ火事だ! とでも言えば、真先に屋根へ駆け上って、肝心の火事はよそに、向側の吉良邸の動静を目を皿のようにして窺ったものだ。
円山会議の後、真先に江戸へ下った堀部安兵衛は、浪人剣客長江長左衛門という触れ込みで、米屋の店にほど遠くない林町五丁目に借宅した。前哨たる米屋の店と聯絡を取って、何かの便宜を計るためであったことはいうまでもない。この借宅には、在府の士小山田庄左衛門を始めとして、七月中安兵衛より一足先に江戸へ下った横川勘平、一足後れてすぐその後から下ってきた、毛利小平太の三人が同居した。そして、横川は三島小一郎、小平太は水原武右衛門と変称した。なお前者は、身分こそ五両三人扶持の徒士にすぎなかったが、主家没落の際は、赤穂城から里余の煙硝蔵に出張していて、籠城殉死の列に漏れたというので、それと聞くや、取る物も取りあえず城下へ駈けつけて、内蔵助の許へ呶鳴りこんだほどの気鋭の士であったから、偵察の任務についても人一倍大胆に働いた。小平太も安兵衛だの勘平だのという気性の勝った連中といっしょにいては、一人ぐずぐずしてはいられない。