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よんじゅうはちにんめ

四十八人目

森田 草平

「改造」1929(昭和4)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 56,183 字 · 112 页

青空文庫

いずれ茶器か何かのことだろうよ。だが、貴公は何にも知らない体で、ただ使者に来たようにしておいた方がいい」

「それもそうだな」

「とにかく、またと得られない機会だ」と、勘平はさらに自分の注文をつづけた。「できるだけ邸内の様子を細かに見てきてもらいたい。近ごろ長屋と母屋との間に大竹の矢来を結い廻して、たとい長屋の方へ打入られても、母屋へは寄りつかれないようにしてあるという噂も聞くが、このごろはあちらでもお出入り以外の物売はいっさい入れないようにしているから、最近の様子はさっぱり分らない。そのへんも十分見届けてきてもらいたいな」

「それに」と、安兵衛もそばから言葉を添えた。「かねがね山田宗※(「彳+扁」、第3水準1-84-34)のところへ弟子入りをしている脇屋氏(大高源吾のこと、京都の富商脇屋新兵衛と称して入りこむ)から、吉良邸では来月の六日に年忘れの茶会があるという内報もあった。すれば、五日の夜は必定上野介在宿に極まったというので、討入はおおよそその夜のことになるらしい大石殿の口ぶりでもあった。だが、頭領としては、その前にもう一度邸内の防備の有無を見定めておきたいと言われるのだ。