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よんじゅうはちにんめ
四十八人目
森田 草平
「改造」1929(昭和4)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 56,183 字 · 112 页
そう思って、彼はまた駈けだすようにして林町の宿へ帰った。宿には安兵衛、勘平の両人はいうまでもなく、吉田忠左衛門の田口一真まで来合せて、彼の帰宅を待っていた。気早の勘平は、足音を聞くや、縁先まで駈けだしてきて、
「おお帰ってきたな、首尾はどうだった?」と、いきなり訊ねた。
「うむ!」と言ったまま、小平太はもう一度振返って、後を跟けるものの有無を見定めてから、始めて座敷へ上った。
奥の座敷には、忠左衛門と安兵衛の二人がひそひそと対談していた。小平太はまず忠左衛門に一礼して、さて安兵衛と勘平の前に持って帰った状箱を差出した。
「ふむ、これが返事だな」と、安兵衛は手に取って、ちょっとその上書に眼をやったが、すぐにまたそれを下に置いて訊ねた。「して、邸の様子は存分に見てこられたか」
「あらまし見てまいりました」
こう前置をして、小平太は指先で畳の上に図を描いてみせながら、はいって行った時から出てくるまでの顛末を仔細に述べはじめた。勘平はそばから硯に料紙を取って渡した。で、それによって、ふたたび見取り図を描いて説明しながら、
「まずこういったあんばいでございます」と、話しを結んだ。