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よんじゅうはちにんめ

四十八人目

森田 草平

「改造」1929(昭和4)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 56,183 字 · 112 页

青空文庫

そうだ、そんなよけいなことを考えないためにも、俺はまずあの女に逢わなければならない。そう思った時、彼はもう矢も楯もたまらなくなって、すぐに支度をして宿を飛びだした。

が、女の家に近づいた時には、それでもまた勘平に言われた言葉が気になった。といって、そのまま引返す気にもなれないので、うじうじしながら、とうとう女の家の軒端をくぐってしまった。

女の方では、そんなこととは知らないから、久しく逢いに来てくれなかった恨みを言うことも忘れて、心から嬉しそうにしながら、

「久しく見えなんだのは、どこかお悪かったのか。そういえば、お顔の色もようない」と、心配そうに訊ねた。

「なに、そう気に懸けてくれるほどのことでもない」と、小平太は面倒臭そうに言った。彼にはもう当座の嘘を言うのが億劫になっていた。といって、真実のことも言われなかった。

「だって、心配になりますわ」と、おしおもさすがに言い返した。「見えると言っても見えもせず、たまたま来れば、いやな顔ばかりしていらっしゃるんだものを」

「じゃ、来なければよかったね」と小平太は気短に言った。

すると、女はすぐに気を変えた。「わたしが悪うござんした。