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とち
土地
豊島 与志雄
「青年」1924(大正13)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,719 字 · 22 页
「お前がそんなことするんじゃねえ。」と平助は叱りつけた。「あっちで遊んでろ。」
おみつはどうしていいか分らないで、顔を脹らましながら、荒野の中に一本聳えてる榎の木影に屈んだ。やがては其処に寝そべって、いつしかうとうとと眠った。
平助はやって来て、彼女の寝顔にそっと麦稈帽子をかけてやり、きょとんとした顔付で、また仕事の方へ戻った。
朝日の光が静に照っている時、平助は荒地の上に屈んで、昨日から幾度も見た音吉の手紙をまた読み返した。それには、家を逃げ出した詫びやら、製糸工場の有様やら、町のさまざまな娯楽のことなどが、平仮名ばかりで書いてあった。少し金を送れるようになるまで手紙を書かないつもりだったが、その金の目当もほぼついたから……、とそんなことも書き添えてあった。
「うめえこと云っておらを瞞かそうとしてやがる。……畜生、何で許すもんか。」と平助は口の中で呟いた。それでも彼は手紙を、大事そうに襯衣の隠しにしまった。
その半日、彼はいつもより力強く働いた。額から流るる汗を泥にまみれた手の甲で払った。
「おらが力でやってみるだ!」
そして満足そうに煙草を一二服吸った。