轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

とちにかえる

土地に還る

豊島 与志雄

――近代説話――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,523 字 · 22 页

青空文庫

「もう諦めるんだね。東京と福井とじゃあ、どうにもならんよ。」

木村明子のことを彼は言ってるのでした。直吉は顔を挙げて、淋しい微笑を浮べました。

「それはもう、諦めてるよ。とうとう、手紙の返事も書かなかった。」

「いっそ、何にも書かない方が、さっぱりしていいだろう。」

「然し、なんとか、最後に一度は書くつもりだ。」

「それも、やめた方がよかろうよ。なんだな、手紙ってものは、一種の気合だからね。気合ぬけがしちゃあ、もうだめだよ。」

それから坪谷の持論として、手紙のやりとりは気合でゆくべきものだとの話になりました。この場合、気合には最も時間が大切なものとなるので、書きそびれた手紙はいっそ書かない方がよいというのです。ついては、この頃のように手紙の送達が後れるようでは、世間からの非難はもっともなことで、それは全く書信の気合をそぐことになるのです。それとも、世人の気合がずっと間延びしたものとなれば、話は別になるのでしょう。――そのようなことを、逓信従業員たる彼が、無関係な方面の事柄をでも批評するようにして、談じてゆきました。

もう暮れかけていましたが、空間のうちにまだ明るみがほんのりと漂っているらしい、ちょっとためらいがちな時刻でした。