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トソンラン

土城廊

金 史良

「文芸首都」1940(昭和15)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,752 字 · 52 页

青空文庫

「今に戻って来るだよ。罪のねえ人あそう永いこともねえだで」

だがどうしたのか、元三の隣りに跼っていた吃男がきゅっと体を起した。先達の云ったことに激しい不服を感じたのに違いない。徳一老人はぶるぶるふるえ出した。凹み目が煤けたランプの焔のように赤く光りを点した。

「何だってや」老人は息をぜいぜいさせた。「よくも云うただな。そったらわしの悴にどげえな罪があるだ。え、知りてえもんじゃねえかよ。え? どうしてまだ出て来ねえのだよ」

「へ、出て来るだ?」吃男はいかにも莫迦にした調子で先達に食い附くように喚くのだ。

「罪のねえ人あ永く、永くねえだ?」

この吃男が村を出たのは三年前のことだった。密酒のことがばれて永い間留置され、五十円の科料を収めるために牛を手放し家財道具を売り払ったからである。吃男はいつものようにその時のことに思い至ったのであろう。

「わ、わしの飯で酒を作っただ。わっしあこの通り罪のねえ人間だ……、餓鬼の時から一生懸命働えて来た……わ、わっしあ、こ、これでも立派な百姓だ……」

「何を云うだよ、お前さんは?」先達の婦は叫んだ。「ふんとうに此頃はみなどうかしているだよ」