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トソンラン

土城廊

金 史良

「文芸首都」1940(昭和15)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,752 字 · 52 页

青空文庫

二人は用心深そうに土幕の間を縫うて土城の上へ登って行った。高くせり上ったポプラの木は西瓜色の空をゆらゆら掻き乱している。西の方の平野を撫でて来る夕風が、濡れ着をばたばたとなぶる。二人はゆっくりと肩から支械(担具)を取り外すと、それを両手にかかえて西側の傾斜へ影陰のように静かに消え失せた。

爺は自分の土幕に近附いて行くと叺のおおい物をおし開いて大きな図体を這いずり込ませた。生温かい悪臭がむっと鼻息を詰らせ、身動きと共に膝元で藁がかさかさ音を立てる。敷藁も濡れていた。爺は手探りでやっとマッチを探し火台に火をつけた。小屋の中がぱっと明るくなり、焔はひらひらと隙間風に揺れ出した。

彼が小さな土幕の中にずしっと坐り込んだ様は丸で大きな石像のようだった。首は度外れに太く、長い口は締りなくあいて、空ろな目は所在ないほど大きかった。火光がてらてらと全身を隈取りつつ照らしている。爺は静かに濡れた上衣を脱いで背をちぢかめ、泥だらけの足袋をうんうん力んで脱ぎ取った。ばら銭が中からざらざらと藁の上に落ちて来るのだ。爺はくくくと笑って拾い上げると、一つ一つ掌の上にのせて調べてみた。